【福島】naturadistill川内村蒸溜所のクラフトジン | ブレンド体験レポート

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この記事の著者

徳留 康矩

徳留 康矩

雪の日に旅先の蕎麦屋で飲んだクラフトジンに魅せられたウェブライター。
温泉好きも手伝って旅先で飲むその土地のお酒が大好き。
旅で見つけた美味しい食材を自宅でお酒のつまみにするのが得意技。

GinYaMEDIAをご覧のみなさん、こんにちは。ライターの徳留(@dome8686)です。
今回、福島県のnaturadistill川内村蒸溜所が開催したブレンド体験イベントに参加してきました。
自宅ジンに加えるほど好きなnaturadistill川内村蒸溜所のジンを深堀りするべく参加してきたのですが、このジンとの出会いは偶然の重なりからでした。この記事では、naturadistill川内村蒸溜所という作り手たちの魅力と、私が体験した「ブレンド体験」の一部始終をお伝えします。

川内村蒸溜所との出会い:代官山から始まったクラフトジンの旅

ホップジャパンのビールからnaturadistill川内村蒸溜所へ

全ての始まりは、東京・代官山でのある夏の終わりの日でした。
地方のクラフトビールを地域のストーリーと共に代官山で紹介している「ビビビ。(@bibibi.daikanyama)」で、福島県田村市の「ホップジャパン(@hop_japan)」のビールを楽しんでいたときのこと。そのビールはホップの香りが豊かで、味わいがはっきりしたビールでした。広報の方との何気ない会話が、運命の分岐点になります。


「普段はどんなお酒を飲むんですか?」
私:「ビールも飲みますけど、最近はクラフトジンが多いですね」
「それなら、隣町でクラフトジンを作っている人たちがいるんですよ。うちと同じホップも使っています」


その名前が、naturadistill川内村蒸溜所でした。
その足で飲める場所を探し、実際に味わってみたところ衝撃を受けました。その時のラインナップにあった「紫蘇忽布蒸溜酒 (Shiso Hop GIN)」がお気に入り。苦味と柑橘の酸味にトニックが加わった時のバランスの美しさ、そのきれいな味のバランスに「面白い作り手がいる」と感じたのでした。

私のお気に入りはShiso Hop GIN 自宅Ginに追加

宇都宮でのブレンド体験イベントへ参加

そして秋の終わり、「宇都宮でジンのブレンド体験イベントを行う」という情報を聞きつけた私は、迷わず新幹線に飛び乗りました。
会場は宇都宮駅のイベント施設「SAKE-TO-SAKE」。そこで私を出迎えてくれたのは、代表の大島さんと、蒸留責任者の高橋さんという二人の作り手さんたちです。

naturadistill川内村蒸溜所とは?代表・大島草太氏が語るジン造りの哲学

写真左から(筆者、naturadistill川内村蒸溜所 高橋さん、naturadistill川内村蒸溜所 大島さん)


ブレンド体験の前に、まずは彼らが「なぜジンを作るのか」を書いておこうと思います。彼らの言葉には、酒造りを超えた「地域と未来」への眼差しがありました。

なぜクラフトジンなのか?ビールから転換した理由

代表の大島さんは、もともとはクラフトビールがお酒業界の入口だったと言います。「福島から世界に出していきたい」という想いを持つ彼が、なぜビールではなくジンを選んだのか。インタビューで彼はこう語ってくれました。
「ビールは熱処理や酵母の管理が必要で、海外へ出すよりも『その場で飲む』のが一番美味しいお酒だと感じたことがあって。そんな中で出会ったのがジンでした。ジンはボタニカルで地域の特徴が出せるし、『こう作りたいからこのやり方をした』という哲学まで表現できる」
さらに、ジンには「バーで化ける」という面白さがある、と大島さんは言います。
「僕らが100だと思ったものが、バーテンダーさんの手によって200にも300にもなる。その可変性が面白いんです」
賞味期限がなく常温で保存でき、世界へ輸出するプロダクトとしても最適。大島さんの視点は常に「福島の香り、日本の香りを世界に届ける」ことに向けられていきます。

福島の森を再生する「地域づくり」としてのジン造り

naturadistill川内村蒸溜所の最大の特徴は、その活動が「地域づくり」や「森づくり」と直結している点です。
「お酒作りもマニアックにやりつつ、その裏で『地域づくり』もしっかりやりたい」
大島さんの構想は壮大です。現在、川内村には手入れされていない森が多く存在します。彼らは荒れた森を買い取り、そこにクロモジなどの固有種を植え、「森」そのものを再生しようとしているのです。
「ジンが主体であることはブラさずに、どうやって地域に人を呼ぶか。蒸溜所での体験、レストランバー、宿泊、そして森。この二軸を回したい」
彼らのジンを飲むことは、福島の森を再生するプロジェクトに参加することと同じなんです。

大島さんのボタニカル技術とホップへのこだわりはビールから

イベントスペースの壁面に書かれたメッセージ


代表の大島さんは学生時代にカナダでクラフトビールに出会い、醸造の世界に飛び込んだ人物です。
彼がこだわるのは「素材の純度」と「ホップの扱い」。特にホップは、蒸留すると香りが飛びやすく、非常に扱いが難しい素材です。
「ホップは苦味成分、花の成分、アルデヒド系の草の成分など、様々なものが混在していて、蒸留で何が集まるかによって全く違う表情になる」と大島さんは語ります。
ホップジャパンで修行し、ビールの醸造もできる彼だからこそ、ジンのボタニカルとしてのホップの可能性を極限まで引き出せるのです。

ジンのブレンド体験

47%の蒸溜酒がところせましと並びます


さて、ここからがいよいよ本題の「ブレンド体験」です。目の前には、naturadistill川内村蒸溜所が丁寧に蒸留した、数々のボタニカルの原酒(アルコール度数47%)が並んでいます。

「これらをブレンドして、あなただけの100mlを作ってください」

普通なら、ここで香りを嗅ぎながら「これとこれを混ぜたら美味しそうだな」と感覚で作るでしょう。実際、私も最初は直感で面白そうな「焼きトマト」や「かやの実」を選んで混ぜてみました。
しかし、出来上がったのは「非常に重たく、余白のない味」。バーテンダーさんが「使いづらい」と眉をひそめそうな、個性がぶつかり合うだけの液体でした。
実は私は本職がウェブマーケターです。「何かウェブマーケターらしいアプローチがしたい。」

「こんなこともあろうかと、事前にAIに自分の好みを学習させてきました」

この分析に基づき、私はAIに”今回用意されている素材リストから、私の脳が最も喜ぶレシピを作成せよ“というプロンプトを投げました。

オリジナルレシピの配合と試飲レビュー

AIは瞬時に、素材の化学成分を照合し、私好みの一つのレシピを提示してきました。
コンセプトは「香水のような華やかさと透明感」。土っぽい要素(蕎麦や山菜類)は、私のNGポイントである「濁り」を生むため、除外されました。
以下が、AIと私の対話によって生まれた、プロトタイプである30mlの配合設計図です。

【ベース:甘い果実と花】

  • においこぶし(8ml):これが主役。甘い果実と花の香りを担当。シトラールやメチルオイゲノールを含み、華やかさを演出します。
  • 橘 -Tachibana-(6ml):日本原産の柑橘。リンゴに通じるフルーティーなエステルと、まろやかな甘みを加えます。

【癒やしと骨格】

  • クロモジ(5ml):私の大好きな成分「リナロール」の宝庫。全体を高級な香水のようにまとめ上げます。
  • ジュニパーベリー(5ml):ジンの定義として必要ですが、ドライになりすぎないよう控えめに。

【アクセントとテクスチャー】

  • ホップ(2ml):マスカットのような青みとトロピカル感をプラス。
  • ハッカ(2ml):甘ったるくなるのを防ぎ、シネオールで後味をクールに引き締めます。
  • カカオ(2ml):これが隠し味。「スイーツのようなコク」と「オイリーな舌触り」を演出するための極微量添加です。

実際に飲んでみた感想|計算された香りの構成

100mlの瓶に入れてお持ち帰り


スポイトを使ってこの配合通りにブレンドしていきます。この時点でけっこう酔っ払っているので、ブレンドは酔いとの戦いであることを感じます。
トップノート:「白い花と蜜」。においこぶしのパウダリーな香りと、橘のジューシーな酸味が広がります。
ミドルノート:飲み進めると、クロモジの上品なリナロールが現れ、そこにホップの複雑な緑のレイヤーが重なります。
ラスト&テクスチャー:ここがAIの本領発揮でした。カカオを入れたことで舌触りに「油分(オイリーさ)」が生まれ、しかし最後はハッカの清涼感がスッと鼻に抜けていく。

出来上がったものは最初の「直感ブレンド」とは次元が違いました。格段にバランスがよくなりました。素材が良いのはもちろんですがAIが綺麗に整えてきた感があります。

「透明感」を最優先し、あえて個性の強い「焼きトマト」や「蕎麦」を外すという決断。それは、naturadistill川内村蒸溜所の素材が持つポテンシャルを信じ、引き算の美学です。やるなAI。

プロのバーテンダーによる評価|熟成による味わいの変化

100ml用にAIに再調整させます


このイベントのゴールは100mlのボトルを作成すること。100ml版では、さらにテクスチャーに深みを持たせるため、AIの提案で「かやのみ(榧の実)」を追加。ナッツ系の油分が、オールドトムジンのような滑らかさを生むという計算のようです。
出来上がったボトルを、恐れ多くも大島さんと高橋さんに試飲していただきました。高橋さんのコメントは、作り手ならではの鋭いものでした。
「トップが強いですね。でも後味は良い。これ、2〜3日置くと味が馴染んで、もっと良くなるかもしれません」
その言葉通り、東京に戻ってから行きつけのバー「Bar Copain」のバーテンダー、ジェーニャさんにも飲んでもらったところ、「トップが強い、後味は良い。少し時間おくと良いかも」と、全く同じ感想が返ってきたのです。

プロフェッショナルたちの味覚の鋭さに驚くと同時に、AIが設計した「味の骨格」が、それなりに形になったことに驚きました。

naturadistill川内村蒸溜所のクラフトジンの魅力

naturadistill川内村蒸溜所のラインナップ。ちなみに一番右はアブサンです。


今回の体験を通じて、私はnaturadistill川内村蒸溜所のジンが持つ、他にはない魅力を感じました。

日本の和ボタニカルの高品質な蒸留技術

「においこぶし」「橘」「クロモジ」「かやの実」。彼らが扱う素材は、どれも個性的で、日本(そして福島)の原風景を想起させるものばかりです。しかし、それらは「珍しい」だけではありません。


高橋さんという技術者が、それぞれの素材から「最も美しい瞬間」だけを抽出しているため、香りに「濁り」がないのです。だからこそ、今回のようにブレンドしても素材同士が喧嘩せず、美しいハーモニーを奏でることができると感じました。

会話が生まれるクラフトジンの楽しみ方

大島さんはインタビューで、「ジンを飲む人の分母を増やしたい。そのためには『文化』としての絶対的なシーンが必要だ」と語っていました。
彼らのジンは、ただ酔うためのものではありません。「これは何の香りだろう?」「どうやって作られたんだろう?」そうやってグラスを傾けながら、作り手や、一緒に飲む誰かと語り合いたくなる。そんなコミュニケーションの触媒となる力を持っています。

森を育てる循環型プロジェクトへの参加

彼らのジンを飲むことは、川内村の森を育てることです。ボトル一本一本に、再生されていく森のストーリーが詰まっています。今回私がAIと作ったブレンドジンも、元を辿れば川内村の土と水と風が育んだ命の結晶です。

さいごに:naturadistill川内村蒸溜所のジンで体験する新しい日本のクラフトジン文化

今回のイベントは「試飲会」を超えた、まさに「クリエイティブな実験室」でした。自分の好みを知り、素材を知り、テクノロジーと感性を掛け合わせて、最高の一杯を作る。こんなに知的で、五感を刺激される大人の遊びはなかなかありません。
naturadistill川内村蒸溜所のジンは、現在も進化を続けています。もしあなたが、バーの棚や酒屋で彼らのボトルを見かけたら、迷わず手に取ってください。そして、もしイベントが開催されるなら、ぜひ足を運んでみてください。

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